二人の夜
バスに揺られて夜の函館へ向かう。隣では嬉しそうに顔をほころばせている彼女がいる。
今日で北海道に来て3日になる。
年末、二人の予定がたまたまあいていたので、新年を函館山の夜景を見ながらすごすことにした。ついた時にはもうだいぶ夜の中だった。
時間は…もう10時半だ。
さすがに人がいっぱいかと思っていたら、人は数えるぐらいしかいなかった。
やはり寒いのと家ですごす人が多いのかもしれない。
少し奥に行った所で僕たちは夜景を見下ろした。
お互い年甲斐もなく、はしゃいでいた。
少しその気分も落ち着いてきた頃には回りに人はいなくなった。
こうやって二人でいるのは久しぶり、と彼女がいった。
確かに最近は二人とも仕事が忙しく、ろくに一緒にいれていなかった。
彼女は唐突に僕の名前をよんで、私のこと…まだ好き?といってきた。
なんでそんな事聞くの?と思い、それを言おうと思ったらやっぱりなんでもないと、彼女は夜景を寂しげに見下ろした。
僕は彼女を抱きしめた…彼女の寂しげなその背中を包みこむように…
彼女は少し僕の腕を掴む。そしてすがるように握り締めた。
もぅ・・・私たち終わりにしましょ・・・
予想もしていなかった言葉だった。
なんで?っと聞いても彼女は何も言わなかった。
言いたくないの?と聞いたら彼女は首を振った。
もう彼女と要た時間は長い。彼女が本気でそんなことを言っていないことぐらいわかった。
私はあなたを愛しすぎたの・・・あなたがこうやって私を抱きしめてくれなくなる時が怖いの・・・
最近あなたと会えない時間が長かった・・・
私はもう胸の奥がつぶれそうなほどにつらかった・・・だから・・・
だから・・・ここで・・・ここで・・・
彼女は泣きながら僕にそういった。
ごめん・・・
これからはずっと一緒にいるから・・・ずっとそばにいるから・・・そんな悲しいこと言わないで?
愛してくれているならもっともっと、今以上に僕を好きでいて欲しい。
いつまででも、こうしていてあげるから・・・
彼女は抱いた僕の腕にしがみつきながら泣いていた・・・
この子をもう泣かせたりなんてしない。この子を幸せにしてあげよう。
それが僕に出来る、唯一のことなんだから・・・
僕は、この瞬く函館の夜景と、空に降る満天の星空にそう誓った・・・